――――お化け屋敷? まあ、大体合ってるかも……ここが鬼の巣窟になってるって知ったら、あの人もっと怖がりそうだけど。

 二人の怖がり具合が少し面白くて、私はつい身を乗り出し過ぎたのだろう。一人がヒイと悲鳴をあげてこちらを指さした。


「――――ちょ……! 陸、あそこ! 何かいるっ……?!」


 しまった! そう思ったけど遅かった。もう一人が様子を見に、こちらへ歩み寄って来る。。生憎、隠れられそうな場所は無い。私は諦めて前へ歩み出た。


 面倒な事になったら、食べちゃえばいいよね……


 音もなく曲がり角から姿を現すと、人間は目の前で止まった。


「えっ……?!」


 余程驚いたのだろう。一言そう声を上げると、目を見開き固まってしまったようだ。

 黒っぽい上着にグレーのズボン。白いワイシャツとネクタイ。これは……制服、ってやつかな。前に地上から帰って来た姉さんに、人間の学生というのが着る、そういうのがあるって聞いた事がある。後ろの方で怖がってる人もだいたい同じ格好だ。

 目の前の人間は背が高くて、見開いた黒い瞳は暗闇でも分かる、奇麗な色をしていた。


「……ちょ……! 陸? やっぱり、何かいた?!」


 完全に腰の引けてるもう一人が、後ろの方で震えた声を出した。目の前の人間はそれで我に返ったのだろう、私を凝視したままそれに答えた。