「…………少し、考えさせてくれ」


 分かる。勇樹の想いが、分かり過ぎる程に。だけど……

 俺がそう答えると、勇樹はまた小さくため息を吐いた。


「――――だと思った」

「え?」

「いや、何も。分かった、考えといて」

「ごめん……」

「鬼退治、明日の夜だから――――お前は絶対、来んなよ!」


 そう言うと勇樹は教室を出て行った。


 ――――鬼退治は明日……


 兎月に知らせないと……でも、勇樹の真剣な顔を思い出すと、足は動かない。

 共存出来る方法はないのだろうか……人間と鬼、どちらからも悲しむ人が出ないような。

 兎月たち鬼が人間を食べなくなれば、俺たち人間は安心して暮らせる。だけどそうすると、鬼は子孫繁栄出来なくなり滅ぶ。

 結局、弱肉強食は自然の摂理で、地上にいる野生動物同様、人も鬼もそれに従うしかないのか……

 ――――不意に、教室の外から声が聞こえてきた。


『――――だろ? ちょっと嘘くさいけど、面白そうだったから……』


 廊下を歩いている誰かなんだろう。その楽し気な声は俺のいる、扉の閉まった教室の中まで響いていた。