仕切り直そうと深呼吸。そんな俺を見て、勇樹はため息を吐いた。


「何なんだよ……何で俺が陸に怒られなきゃならないんだよ」

「……鬼退治を止めてくれ」

「何で? 陸だって騙されて危なかっただろ。それなのに何で鬼の肩を持つんだよ」

「……」

「……あー、あー、あー、あれだよね! 陸はあの鬼――――兎月だっけ? 好きだったから、だからだよね」

「……関係ないだろ」

「あるよ、大有り」


 そう言うと勇樹は立ち上がり、少し離れて立っていた俺の前へ。あれだけ茶化していたのに急に真剣な表情になり、口をギュッと引き締める。


「なあ陸、俺からも頼みがある」

「え……?」

「もうあの洋館に行かないでくれ。鬼退治に参加しろとは言わない。けど、あの女――――鬼とはもう、会わないでくれ」


 勇樹は真っ直ぐに俺を見つめてくる。その瞳にふざけも嘘も無い。


「俺は陸を親友だと思ってる。その親友が鬼なんかに食べられたくないんだよ。だから……」


 俺だって……逆の立場だったら同じ事を考えたと思う。実際、勇樹が美兎に襲われた動物園で、勇樹を守ろうとした。

 勇樹が鬼退治を思いついたのも、騙されて裏切られた怒りからだけじゃない。

 俺を守ってくれようとして……