――――全部話し終わった時には、外はもう夕陽で赤くなっていた。勇樹は何も言わず窓の方へ近づいて、閉じていた窓を一気に開けた。
シンとしていた教室に、風と一緒に外の雑音が流れ込む。部活をしている生徒たちの声、吹奏楽部の楽器の音、誰かたちの楽し気な笑い声。それら全てが風と一緒にカーテンを舞い上げ教室を駆け抜けていった。
突然、外を見ていた勇樹が声をあげて笑いだした。
「――――鬼、とかって……ダッサ……! 陸、マジで言ってる? あはは、信じそうになったわ!」
「嘘じゃない! 俺だってまだ信じられないけど、本当なんだ! お前だって見ただろ? あの動物園で…………」
彼女たちの頭に突き出た二本の角、人ではない赤い瞳……
「ふざけんなよ! じゃあ俺は鬼を好きになって、その鬼に食われそうになったって言うのかよ!」
怒鳴りながら俺へ振り返った勇樹は、泣いていた。
「しかもその鬼は……美兎は死んだとかって……! もう訳わかんねーよ! そんなの信じられるかよ! ……信じたくねーよ……!」
勇樹は崩れるようにしゃがみ込み、両膝を抱え顔を埋めてうずくまる。彼からはもう、くぐもった泣き声だけしか聞こえなかった。