勇樹が登校してきたのは、それからまた三日程過ぎてからだった。

 熱は下がったようだが、かなり憔悴した暗い表情。教室の席は離れているけど、俺と目が合うと勇樹は気まずそうにサッとそらしてしまった。

 その後も散々避けられ、やっと捕まえた時にはもう放課後だった。逃げる様に帰ろうとしていたのを無理矢理捕まえて、人気(ひとけ)の無い空き教室へ連れ込んだ。

 勇樹の背を黒板に押し付け向かい合う。それでも彼は目をそらし、こちらを向こうとはしなかった。


「――――勇樹! こっちを向いてくれ! 話があるんだ」

「……お、俺には無い」

「お前の彼女だった美兎の事だよ! 大事な話なんだ!」

「止めてくれ! もう忘れたいんだ!!」


 掴んだ勇樹の腕から震えが伝わってくる。それは恐怖からの怯え。

 無理もない……俺だってまだ、あの夜の兎月と美兎の姿を思い出すと怖くて身体が震えるのだから。


「分かるよ、俺だって……あれは夢だったんだって忘れたい。だけどその前に、本当の事を知っておいた方がいいと思うんだ」

「本当の事……?」


 勇樹は(いぶか)しげな表情でやっとこっちを向いてくれた。