月の無い夜空を見上げながら、洋館からの道を帰っていた。もう何度この道を行き来しただろう。

 この道を行く時は彼女に会える事にワクワクし、帰りは少し寂しかった。でもまた訪れる事を考えて楽しくなる。

 それなのに、今この帰り道はそのどれでもなかった。


 出逢った時から――――少し、変わった子だな、とは思っていた。


 こんな廃れた洋館に一人で越してきて、病気でいろいろ不自由をしているみたいなのにそれを介助する人もいない。学校へも行った事が無く、世の中の事を知らな過ぎる。

 今まで海外で暮らしていたと言っていたが、それにしてもポテトチップスすら知らないなんてありえないと思った。世界中たいがいの国で、ネットで何でも買えて何でも知る事が出来る世の中なのに。

 きっと、そんなものも何も無い発展途上の国にいたんだ――――そう自分を納得させていた。

 だけど彼女の真実は、そんな俺の想像を遥かに超えていた。


「――――鬼、だって……そんなの、嘘だろ…………」


 洋館を取り囲む森を歩きながら、思わず声が漏れ出てしまった。

 だって、そんなの信じられない……

 鬼って、あれだろ? 昔話や漫画とかに出てくる角の生えた空想上の化け物。高校生にもなってそんな事言われても、はいそうですか、と簡単には信じられない。