洋館へ着く頃には、太陽は山の向こうへ隠れてしまった。空には星が瞬き始め、じきに月も顔を出すだろう。

 いつもの部屋に向かい合って座る。途中のコンビニというお店で、陸がポテトチップスとコーラを買ってくれたのを、テーブルに広げた。


「――――で、美兎が死んだって、どういう事?」


 陸はポテトチップスにもコーラにも手を出さず、私にそう聞いた。


「……仕方のない事だったの」

「仕方のない?」


 外から何かの甲高い鳴き声が聞こえた。森にキジでもいるのかもしれない。こんなに暗くなってから鳴くなんて、危険を感じたのかそれとも、何かに襲われたのか。


「……陸には、どう説明すればいいかな」

「最初から……! 兎月たちの事を、最初から全部教えてくれ!」


 本当は、人間に鬼の話なんかしてはいけない。大抵は信じてもらえないから。それに、信じた人間は恐怖に駆られ私たちを排除しようとするから。

 でも、私は話した。最初から全部。

 陸には本当の私を知って欲しいと思ったから……



 ――――全てを話し終わると、陸はすっかり俯いてしまった。両手を膝の上で握りしめ、怒っているように見える。


「……兎月は鬼で……俺を食べようと思ってたのか……」


 怒って当然だよね……ずっと陸を騙していたんだから……