「り、陸……たすけて……!」
怯え切った勇樹が、か細い声で助けを求めた。その声に、やはり空気に呑まれていた陸が我に返り、美兎へ歩み寄る。
「おい! 何なんだよ、お前!」
グイと乱暴に美兎の肩を引いたが、その手を彼女に掴まれた。そしてそれを思い切り振り払われる。その反動で、陸の身体は勇樹のいる方向へ軽々と吹き飛んでしまった。
人ならざるものの力――――それが、鬼だ。
折り重なるように倒れた陸と勇樹。二人はやっと起き上がると、怯えて震えながらまるで化け物を見るような目で美兎を見つめた。
「陸! 陸、大丈夫?!」
「逃げろ! 兎月!」
陸は私を心配してそう叫んだが、逃げるわけにはいかない。私が逃げてしまったら、鬼化して暴走している美兎に、勇樹だけでなく陸も食べられてしまうかもしれない。
どうしよう……どうしたらいい……?
――――鬼の急所は知っている……だけど…………
私も鬼だから、何処を攻撃したらいいのかは分かっている――――角と喉元だ。
だけどそこを確実に狙うには、私も鬼にならなければいけない。人間に擬態したままでは、彼女の力には敵わないから。
美兎を止めるには、私も鬼になるしかない……でも……
陸に鬼だとバレてしまう……