「――――どうしたの?」


 ニコニコと楽しそうな陸に問いかけた。


「ん? 何が?」

「何だか陸、楽しそう……?」

「ああ……楽しいっていうか、嬉しいんだ」

「嬉しい……?」

「あいつ……勇樹の事だけど。少し前に彼女に酷い振られ方してさ、いつも煩く騒いでるけど、実は凄い落ち込んでたみたいなんだ」

「そうなんだ……」

「だから、また彼女が出来て、元気になって良かったなあって思って」


 まるで風船が割れたように心臓がドキンと大きな音を立てた。


 勇樹が食べられたと知ったら、陸は……

 でも……食べなければ美兎が死んでしまう……


「勇樹たち、このまま上手くいくといいなあ……」

「――――あ、あのね、陸……!」

「ん?」

「二人の所、行ってみない? どうしてるのか気になるし……」


 ――――ダメ! やっぱりダメだ! 勇樹を食べるなんて、美兎にさせたくない!

 こんなに優しい陸を、悲しませたくない……!


「いや、でも……邪魔になっちゃ悪いし……」

「いいから、行こう!」


 私は陸の手を取ると走り出した。もう日が暮れていて良かった。体の自由が効くようになってるから、これならすぐ二人に追い付けるだろう。

 私は陸を引っ張りながら、全力で走った。