「今度の日曜日、勇樹たちと昼間出掛けないか? 俺も勇樹も部活もバイトも休みだから、勇樹とその彼女と、俺と兎月で……動物園に行こうって」
「動物園……」
動物園って確か、動物がいっぱいいる所。人間が、動物たちを閉じ込めて見世物にしている場所だ。
どうして人間は、そんな酷い事をするんだろう……自分たちだって、食べたり食べられたりする同じ動物なのに。
「もちろん、兎月の具合が良かったら、でいいよ。昼間は身体、大変なんだろ?」
「うん、でも……」
「やっぱり、無理、かな……」
私に断られる事を察知して、しゅんとなってしまった陸。その姿がしょぼくれた犬のようで、何だか可愛くて。
「……いいよ」
「え……?」
「動物園、行った事無いから私、行ってみたい」
……どうしてそんな事を言ってしまったんだろう。昼間なんて怠くて身体が重くて、歩くだけでも酷く体力を使うのに。
でも陸が見せた、嬉しそうな笑顔。それにつられて私も何だか嬉しくなって笑ったら、胸の所がぎゅうってなった。
心臓がドキドキしてぽかぽか温かくなって――――息が詰まる程苦しい。
これも、地上の環境のせいなのかな……
陸は「また来る」と言って嬉しそうに帰って行った。その後ろ姿を見送りながら、私は苦しくなってしまった胸に手を当てていた。
◇