「そ、そんな事ない! 俺は今でもサッカーは好きで……! 部活も仲間と一緒で楽しくて……!」

「じゃあ、やればいいのに」


 どうしてだろう。私がそう言ったとたん、陸は驚いたような顔をした。

 そして私を見つめたまま、また沈黙。陸がじっと見つめてくるのが少し恥ずかしくて、私はかりんとうをもうひとつ口へ入れた。甘い。


「……そう、だよな……そうだよ……! 別に上手くなくても俺、サッカー好きで……!」


 陸は私に言うでもなく呟くと、何だか可笑しそうにははっと笑った。


「バカみたいだな、俺。今回メンバー選ばれなかったくらいで落ち込んで、拗ねて部活サボって……ほんと、バカだ!」

「陸……?」

「ありがとう、兎月! ありがとう……!」


 陸は嬉しそうに笑った。

 どうしてお礼を言われたのか、全然意味が分からない。でも、陸が嬉しそうに笑っているので、私もちょっと嬉しくなった。

 ……ほんと人間って、よく分からないや。