「……サッカー部に、入ってるんだ」

「サッカー部は、忙しくないの?」


 陸は顔を伏せたまま、ふるふると首を横に振った。


「うちの高校は強豪校じゃないからそこそこ緩いんだけど、平日は毎日、練習がある……」

「練習、行かないの?」


 彼はまた、黙ってしまった。

 私も黙ってかりんとうに手を伸ばす。ひとつ取って口に入れると、チョコとは違うじんわりとしみる甘い味。少し噛むとそれは口の中でほろほろと崩れた。


「……兎月と知り合う少し前にさ、部内で新しくメンバー編成したんだ。同じ学年で仲のいい奴らはみんな選ばれたんだけど、俺だけダメだった……」


 メンバーとか選ばれるとか、何の事だかよく分からなかったけど、どうやら陸だけそこに入れなかったみたいだ。


「まあ、仲間うちで俺が一番下手なのは、自分で分かってたんだ。でも……練習、頑張ってたんだけどな……」


 悔しそうな悲しそうな、陸の表情……


「そのメンバーに入れなかったから、陸はもう部活に行かないんだ?」

「練習しても俺下手だし、もう無駄だって分かったから……何か、さ…………」

「ふうん……部活とかサッカーって、上手に出来なきゃいけないの?」

「え……?」

「下手だと、嫌いになっちゃうの?」