その後も、陸は何度も会いに来てくれたが、勇樹はあまり顔を見せなかった。彼女を連れて来る事も無かった。その彼女とはよく会っているみたいだが、どうもここへ来たがっていないよう。
来ても来なくても、私はどちらでも良かった。元々、人間の女には何の目的も無いのだから。
勇樹はその他にも塾という所へ行ったり、部活というものがあったりバイトをしたりと、何かと忙しいみたいだった。
人間というものは、とかく忙しい生き物のようだ。
「――――ねえ、陸は忙しくはないの?」
陸は今日も来てくれた。お土産のかりんとうと緑茶を飲み食いしながら、純粋な疑問を彼に投げかける。
だって、あれだけ勇樹が忙しいというのだ。同じ『人間の若い男』の陸も、同じように忙しいのではないかと思うのは必然で。
「俺も一応、塾へは行ってる。だから時々、来られないんだ。バイトは今の所、してないけど……」
「部活、は?」
私がそう聞くと陸は何故か、かりんとうを食べる手を止め、気まずそうに顔を伏せてしまった。部活、というのは学校で、スポーツや芸術や興味のある事をそれぞれやりたい人が集まって集団でやる活動なんだと陸に教えて貰っていた。
私は何か、彼に不都合な事を聞いてしまったのだろうか……?