「この景色を、兎月に見せたかったんだ。あと、もう一つ……」
「もう一つ?」
もう一つ、はすぐには見られないらしい。だから、私と陸はしばらくそこで待つ事にした。
街を見下ろしながら並んで座る。陸が鞄からチョコレートと紅茶を取り出して渡してくれた。チョコレートは凄く甘くてびっくりしたけど、少し苦い紅茶がそれを流してくれる。
陸が持ってくる『お土産』は、いつも美味しい。
そんな飲み食いをしつつ待っていると、やがて夕焼けが宵闇に変わり。更に待つと、星が瞬き始めた。もう少しで、月も顔を出すだろう。
「……そろそろ、かな。兎月、空を見てて」
言われるまま、私は星空を見上げた。昨日の雨が雲をすっかり洗い流してしまったのだろう、まるで月で見る空のように暗く澄んでいた。
すると……夜になりたての空で、星が一つキラリと瞬いた気がした。何だろうと思い目を凝らすと、その星が夜空をつうと流れていった。
――――流れ星だ!
そう思った瞬間、夜空に散らばる星々が次々と流れて光の線を描いてゆく。星の流れは一瞬で消えてしまうが、一つ消えるとすぐにまた次が流れ。その儚さと美しさに私は目を奪われた。