四日目は晴れ。月では天気の変化なんて無いから、毎日コロコロと変わるのが面白い。

 やはり昼間は寝て過ごす。そして、真っ赤な夕焼けの光が部屋にも差し込む頃、陸が来てくれた。

 彼は律儀にまたお土産を持ってきてくれた。今日はチョコレートという甘いお菓子と、紅茶という口の中でプチプチ弾けないという飲み物。

 今日も彼は一人だった。


「勇樹も誘ったんだけど、何かあいつ用事があるみたいで……ごめん」

「ううん、別にいいよ、陸が来てくれるなら。部屋へ入るでしょ? チョコレート、食べよう」

「いや、今日は少し出掛けないか? 兎月に見せたいものがあるんだ」

「見せたいもの……?」


 陸が何を見せたいのか全く分からなかったけど、私は彼に従う事にした。

 陸の後に続いて歩く。どうやら、洋館を囲む森の奥の方へ行くみたいだ。ゆっくりと、時々私がちゃんと付いて来ているか確かめるように、彼は振り返った。

 私が病気だと思っているから、きっと心配してくれているのだろう。

 もう陽も暮れてきているから大丈夫なのに……

 しばらく歩き、少し傾斜を登って行くと開けた場所に出た。そこは、森を抜けた丘の上。陸の隣に並んで立つと、眼下に広がる街並みが良く見える。上を向けば、真っ赤な夕焼け。


「奇麗……」


 思わず口から出た言葉。それを聞いた陸は、嬉しそうに笑った。