私は陸とソファに向かい合わせで座る。間にあるテーブルの上には、彼が持ってきたコーラとポテトチップス。それは飲み物とお菓子だと、陸は教えてくれた。

 ガサガサとポテトチップスの袋を開けながら、陸は尚も質問を続ける。


「兎月は俺と同い年ぐらいだろ? 何処の高校行ってるんだ?」

「ううん……学校は、行った事無い。昼間は体が上手く動かないから、ずっと寝てるの」

「えっ……」


 私がそう答えると、陸はまた驚いた顔をした。

 ……私が質問に答えると、彼を驚かせてしまうみたいだ。姿は上手く人間に擬態出来たが、その習慣や言動までマネをするのは難しい。

 陸の驚きようから私は、若い人間で昼間に学校へ行かない者はいないのだろうと理解した。それをどう誤魔化そうかと考えていると、どうやら陸はまた勝手に納得してくれたみたいだった。


「違ってたらごめん……もしかして、兎月は何か病気、なのか?」


 何処をどう勘違いしたんだろう……昼間寝てるって言ったから? でもそれは、太陽が眩し過ぎるからってだけなんだけど……

 私はとりあえず、曖昧に笑みを返した。


「そうか……それなのに一人で暮らすなんて、大丈夫なのか?」

「う、うん、大丈夫。昼間あまり動けないだけだから、それ程大変じゃないよ」


 私がまた曖昧な笑みを浮かべると、陸もつられたのか、少し困ったように笑った。