「……連れて来られなくてごめん。次は絶対、引きずってでも連れて来るよ」

「うん……そうしてくれると嬉しい。私、ここに来たばかりだから、知り合いがいなくて……陸みたいな人たちと、たくさん会いたいの」

「そうなんだ……」


 私がそう言うと、今度は陸が何故かガッカリした顔になってしまった。どうしてなんだろう?

 人間って、よく分からないや……


「……じゃあ、俺の通ってる高校に行ってみる? ここから近いんだ。今ならまだ、部活やってる奴らがいると思うから」

「ううん、今日はいい……今日は、陸が来てくれたから」


 彼は照れくさそうに笑った。




 陸を家へ招き入れて、またあの月がよく見える部屋へ。でも今はまだ夕焼け空でその姿は見えない。


「――――適当に、その辺に座ってね」


 私はそう言いながら、部屋のソファーセットに掛けられていたホコリ避けの布を剥いだ。布と一緒にホコリがふわりと舞い上がり、陸は少し嫌そうに顔をしかめた。


「兎月は昨夜来たばかりって言ってたから、まだ何もしてないんだよな」

「何も、って……?」

「荷物片付けたりとか、掃除とか……」

「ああ、うん……」


 すぐに月へ帰るから、ただ眠れればいいと思っていたけど……これからも陸をこの家へ呼ぶなら、どうやらそうもいかないみたいだ。

 やれやれ、人間って面倒な生き物だ……