出掛ける準備をしようと、ふと庭に視線を落とすと、そこに人がいる事に気がついた。


 ――――陸だ……!


 そうか、森の鳥たちが慌てて飛び去ったのは、彼が来たからだったんだ。

 私は急いで玄関へ。玄関のドアを開けると、そこに陸は立っていた。私が急に出てきたからだろうか、彼は少し驚いた顔をしていた。


「――――陸! 本当に来てくれたんだ」

「ああ……うん。でも呼び鈴が見つからなくて……どうやって呼ぼうか困ってたんだ。出てきてくれて良かったよ」


 陸はそう言って照れたように笑った。

 今日も彼は昨夜と同じ制服姿だ。人間の若いのは、昼間は学校という所へ行くみたいだから、多分その帰りなんだろう。

 その学校って、ここから近いのかな? まだこの家以外、散策してないから分からないけど。

 あれ? そういえば……


「……もう一人の人は、今日はいないの?」

「ああ、あいつ……芦田 勇樹(あしだ ゆうき)って言うんだけど、何か今日は用事があるみたいで……」

「そう……」


 少しガッカリ。

 だって、陸が『若い男』なんだから、よく似た風体の彼もきっと同じなんだと思うから。もし勇樹という彼もそうなら、私はいっぺんに二つも『若い男』を手に入れる事が出来るのに……