『――――次のニュースです……県で先週から行方の分からなくなっていた女子高校生が今日の午後、自宅近くの河川敷で遺体となって発見されました……』


 ……いやだな、耳障りな声。でも、この箱から出る音の止め方が分からない。

 箱に映った人間が、さっきからずっと何か話してるけど……人の言葉って、意味を理解するのが少し難しい。


『――――遺体は白骨化しており、骨に僅かに残っていた皮膚片でDNA判定したところ、本人と判明。骨に切り傷や打撲などの損傷は見られませんでしたが、動物のもののような歯形が付いていたとの事です。警察は事件と事故、双方で捜査を開始しました……続いては、お天気です――――』


 ……さっき、ここを押したら点いたから、また押せば止まるかな?


「あっ、良かった、止まった……!」


 思わず声が零れ出た。箱からの音が止まると今度は、自分の声がやけに大きく響いて聞こえた。その箱が『テレビ』という物だと私が知ったのは、何日か後だ。

 夜、灯りもついていない暗い部屋の中、私は吸い寄せられるように窓へ向かう。床から天井まである、壁一面の大きな窓。白いレースカーテンの向こうから、月の明かりが零れていた。

 レースのカーテンを少し開けると、山の上に煌々と輝く大きな満月が見える。


「まん丸だ……今ごろお母さん、何してるかな…………」


 満月を見上げ、私はそこに居るお母さんの事を思い出していた――――