会えない分、声だけは必ず聴かせてくれる人だった。一晩空くくらいはもちろんある。でも次の日に『昨日はごめん』で始まる電話で安心させてくれた。

だから。スマホが鳴らなかったその日もなにか都合が悪かったんだろうって。いつも通り『沙喜の声が聴けなくて寂しかった』って言ってくれるって。深く考えてなかった。

二日続けて沈黙したスマホに不安を覚え、思い余って自分からかけた。電源が入っていない、のメッセージが耳の奥に流れ込んだ瞬間。頭の中が白く焼けついてく。

電源が入ってない。うそ。どうして。だってそんな!

内臓がこれでもかってくらい捩じり上げられて吐き気がする。何度かけ直しても繋がらない。突然、道を塞いだ黒い壁。上を向いても、右も左も果てが見えない。

なにかあった?分からない。それともまた捨てられたの?やっぱりあなたも、わたしを要らなくなったの・・・?

ココロが錆びついてく。干からびてく。嫌。もう考えたくない。

だったらいいの。
もういいの。

このまま壊れるから。
朽ち果てるから。

理由なんかいらない。
意味もいらない。

なにも持ってない最初に戻るだけ。

イタクナイ。呪文を唱える。イタクナイ、イタクナイ・・・・・・・・・。