耳の奥に『立場』『無駄』・・・そんな言葉がざらついた感触で残ったまま。置いていかれた封筒はカフェテーブルの上。

見ないで全てナオさんに委ねるべきだろうか。けれど彼女はここまで来た。妻としてのプライドにかけて。

べッドに座りこみ、窪田リーガルオフィスと印刷されたロゴをじっと見据えた。ナオさんを受け容れた時から、何かしら払う代償の覚悟もしていた。

でもそれは、折れて逃げるって意味じゃないから。

息を吐いて。
わたしは真っ直ぐに手を伸ばした。