「遠坂さんはもう、俺のこと好きじゃないの?」

「っ、好きに決まってます!」

「『七瀬くんが幸せになる道を作ります』って言ってたじゃん。あれ嘘なの?」

「嘘じゃありません!」

「なら、俺と恋してくれないの?」

「───えっ…」


七瀬くんはそっと優しく両手で私の手を握る。


「俺、遠坂さんのこと好きになっちゃったんだけど」


可愛らしく、こてんっと首を傾げながら彼はそう言った。

七瀬くんに"好き"と言われた瞬間、全身が一気に熱を帯びていき、つんっと鼻先が痛くなる。


「わ、私も…好き、です」

「…じゃあ、俺の彼女になる?」

「…っ、それは……」


返答に困っていると、七瀬くんは小さくため息をつき、

「ま、そういう反応しちゃうよね」

と呟き、ぽんっと私の頭の上に手を乗せた。


「あれだけ岡田さんにボロクソ言われちゃあ、そりゃ自信なくすよね」

「七瀬く───」

「俺、遠坂さんを見た目だけで好きになったわけじゃないからね。きみの言動や仕草、表情とか、居心地の良さだったりとか…優しい心を持った遠坂さんだから惹かれたんだよ」


七瀬くんは目を細めて柔らかく笑った。