「いや、やっと目合わせてくれたなって…」
「えっ…」
「今日一度も目合わしてくれなかったでしょ。昨日、俺がきみにキスしたのが原因かなって…。嫌だったら謝る。ごめんなさい」
頭を下げる七瀬くんに私は慌てて首を横に振る。
「い、いえ…!嫌ではなかったです!好きな人とのキスは憧れであって、えっと、寧ろ嬉しかったというか…!」
何だか、ものすごく恥ずかしいことを言っている気がする…!
「……じゃあ何で俺のこと避けるの?」
「っ…」
彼の問いに何て言おうか、言葉を詰まらせた。
七瀬くんのとてつもなく柔らかな唇に頭がいっぱいでずっと逃げてました…だなんて、正直に言えないしなぁ。
私は両手の拳をぎゅっと握りしめ、俯いた。
「…キスは、お互いが両想いだからこそすることであり、海外の挨拶でするようなものではなくてですね……だから、その…そういうことは好きな人にだけしてください。か、勘違いしちゃうので…」
「勘違いしてよ」
反射的に顔を上げると、七瀬くんの黒い瞳とばっちり視線が絡まった。
「言ったでしょ。『したくなったから』って」
ドクン、ドクン…と鼓動が更に速くなっていく。