「私みたいな人間が好きな人に自分のこと好きになってくれるわけないってちゃんとわかってるから!!だからもう、ほっといてよ!!」
精一杯の声を出し、岡田さんの手を振り払った時───…。
「そんなことないと思うよ」
聞き覚えのある声がして、ゆっくり顔を上げる。
「…っ、七瀬、くん……」
視線の先には眠たそうな瞳で私たちを見ている七瀬くんの姿が。
「遠坂さん、やっと見つけた。鞄持たずに教室出てっちゃうんだもん。すっごい探したよ」
七瀬くんが持っている鞄を見て、私は手ぶらでいることに今更気づく。
「…岡田さん、だっけ?」
七瀬くんは私たちの間に割り込み、立ちはだかる。
「俺、好きな人できたからさ、これからは俺らに関わってこないでくれる?」
「「えっ…」」
七瀬くんの言葉に目を見開いた。
…そっか、七瀬くん、とうとう好きな人が……。
恋、できたんだね。
「…な、七瀬くん…好きな人できたって、マジで言ってる?」
「本当だよ」
「そんな……そ、それってどんな子?」
七瀬くんは「んー…」と顎に手を当て、考える素振りをする。