「「……」」


七瀬くんと中条くんが「えっ…?」と言った顔で私を見てくる。


「そ、それでは、私…先行きますので!ご、ごきゅっ…ごきげんよう!!!」


昨日の放課後の時と同様、全速力でその場を立ち去る。


どうしよう、どうしよう!!

七瀬くんの艶やかでマシュマロ(?)のような柔らかな唇にしか目がいかない!!

私、相当変態だ…!!!

とにかくだ。

今日は…いや、しばらくは七瀬くんに会いたくない。

クラスが違うから顔を合わす確率は低い。

移動教室以外は出来るだけ教室から出ない!


───そう、決意したのも束の間。






「あ、遠坂さん」


1時間目の授業終わりにお手洗いから帰っている途中、体操服姿の七瀬くんと遭遇してしまう。

頭のてっぺんから爪先までじーっと見つめ、ふと、あることを思った。


何で好きな人が着る運動着って、フィルターがかかったかのように魅力的なんだろう……。


「…遠坂さん、あの───」

「おーい、七瀬〜!授業遅れるぞ〜!」


七瀬くんの体操服姿にうっとりしていた時、彼の友人らしき声が聞こえてハッと我に返る。


「し、失礼します…!」


彼から目を背け、駆け足で教室へと逃げ込んだ。