「なっ…七瀬くん寝てなかったんですか!?」
「シンキングタイムをくれたから机に伏せながら考えてたんだけど、きみが寝てるって勝手に解釈するもんだから顔上げるタイミング失っただけだよ」
「うわわわわわっ!!?」
「図書室では静かにしないとだめだよ」
さっきからずっと騒いでましたけども…!!
「カ、カエッテイイデスカ!?」
「だめ」
ぐいっと引っ張られ、七瀬くんの前に座らされる。
「ねえ、もう1回言って」
「ししし、知りません!!何も言ってません!!!」
「『唯人くん』って呼んでくれた。お願い、もう1回言って、汐莉」
「〜〜〜っ!?」
突然下の名前を呼ばれて、心臓は爆発寸前。
振り解きたくても相手の握る力が強くてびくともしない。
完全に逃げる術を失ってしまった……。
「っ…、ゆ、ゆいとくん」
「もう1回」
沸騰しそうなくらい全身が火照っていき、目に涙が溜まり始める。
「……ゆいと、くん…」
「もう1回」
骨張った大きな手が私の頰を包み込む。
「こっち見て言って」
七瀬くんの手によって顔を上げさせられ、お互いの視線が絡み合う。
「ゆ…唯人く───」
そう呼び終える瞬間、彼の綺麗な顔が近づいてきて。
七瀬くんは目を閉じ、そのまま私の唇を塞いだ。