「…七瀬くんのばか」
ぽそっと呟き、深いため息をつく。
『じゃあ、中条くんに俺と遠坂さんの方が仲良いってこと分からせたいからこれからは俺のこと下の名前で呼んでよ』
下の名前、か。
ふと七瀬くんの言葉を思い出す。
私は少し腰を上げて、そっと彼の耳元まで顔を近づけて───。
「好きです、唯人くん」
誰もいない図書室で、私と七瀬くんの2人だけの空間で。
───小声で彼に想いを伝えた。
本人は寝ているため、返事は返ってこない。
…寝ている時に想いを伝えたって、意味ないのにね。
ふわふわと柔らかそうな黒髪をじっと見つめる。
そして今、自分がしたことに恥ずかしさで居た堪れなくなった私は図書室を出ようと立ち上がった時───…。
「今のもう1回言って」
そんな声と同時に後ろからガシッと腕を掴まれる。
「…えぇっ!?ききき聞いてたんですか!?」
「聞いてたっていうか、ずっと起きてたんだけど」
な、なんだって!?