「俺の下の名前、わかる?唯人(ゆいと)って言うんだけど」

「し、知ってますよ!」

「…あ、今呼ぶ練習する?」

「えっ、ちょ、七瀬くん……!?」


一歩後ずさろうとしたが、トンッと背中に窓ガラスが当たる。

そして、七瀬くんは私を追い込むように窓枠に両手を置き、覆い被さる状態になる。


「ほら、唯人って呼んでみ」


端正な顔が視界いっぱいに広がり、近すぎるあまりに耐えられなくなった私は、


「やめてください!!」


精一杯振り絞って七瀬くんを押しのけた。


「…なんなんですか。七瀬くん、最近おかしいです。今だってそう。ムキになったり、張り合ってきたり、名前で呼べとか言ってきたり…!」


わからないよ。

七瀬くんは今、何を考えているの?


「七瀬くんはっ…七瀬くんは、一体何にムキになってるんですか!?中条くんのことが気に入らないから?それとも───私と中条くんの関係についてよく思ってないから?」

「……」

「七瀬くんの今の"感情"はなんなんですか?」


はあ、はあ…と息を荒げる。

七瀬くんは私に嫉妬してくれてるの?

七瀬くんのその嫉妬は"恋愛"に対して?

それとも、"友達"に対して?