七瀬くんはガサガサとラッピング袋を開け、マフィンを一口頬張った。

無理しないでいいのに…と思いながら相手の反応を窺う。


「ど、どうですか…?」

「おいしい」


どういう表情なのかはわからないけど、七瀬くんの口から『美味しい』と言ってもらえて、安堵のため息をついた。


「バナナ嫌いって聞いたから本当は渡さないつもりだったんですけど……『美味しい』って言っていただけてよかったです」

「…あれ、元々俺にくれる予定だったの?」

「まあ、はい…」

「…そっか」


七瀬くんは少し目を細め、もう一口マフィンをパクッと食べる。

…なんか、少し嬉しそうなのは気のせい?


「こ、今度はまた別のお菓子作ってきてもいいですか?」

「また作ってくれるの?」

「はいっ!次はバナナ入れませんから!!」

「…ふはっ、ありがと。でも俺は遠坂さんが作ってくれる物ならなんでも嬉しいよ」

「っ…」


…この人、すぐそういう期待させるようなことを言ってくるんだよなぁ。

鵜呑みにしてはいけないと昨日学んだのだからすぐにときめくな、私!!