「ななな、中条くん!?何してるの!?」

「何って、七瀬くんに自慢してんの。残念だね、七瀬くん。マフィンの上にバナナ乗っかってるから食べられないね」


「遠坂さんかわいそう。しくしく」と泣くフリをして挑発する中条くん。


「…なんで俺がバナナ嫌いって知ってんの?」

「え〜、なんとなく?なんか七瀬くんバナナ嫌いそうな顔してんじゃん?」

「…何言ってんの?」


…なんだろう、この険悪な雰囲気。

中条くんはニコニコしてるのに七瀬くんは眉間にしわを寄せている。


「遠坂さん」

「は、はいっ!?」


いつもより声のトーンが低いような気がして、思わず背筋がピンッと伸びた。


「マフィン、俺のは?」

「えっ…?えっと…何個かは余ってます…」

「じゃあ、余ってるの全部ちょうだい」

「…ええっ?」


一体どうしてしまったんだ、七瀬くん。


「どうしたの、七瀬くん。バナナ嫌いなんでしょ?無理に食べるのはよくないよ〜?」

「遠坂さんのモノは俺のモノだからバナナがどうとか、関係ない」


キッと睨む七瀬くんに、私と中条くんは目をまん丸にする。


「…七瀬くん、急にガキ大将みたいなこと言うじゃん。おもしろ」


中条くん、つっこむとこそこ?


七瀬くんの言葉に何て言おうか悩んでいると次の授業が始まるチャイムが鳴る。


「やばっ、教室戻んないと!行こ、遠坂さん」

「う、うん…!」


私と中条くんは慌ててその場を後にした。