「な、中条くんこそ他所のクラスにどうしたの?」

「オレは友達に教科書借りてたから返しに来ただけ〜。遠坂さんだってマフィン持って何しに───…あっ」


中条くんはニヤニヤしながら「そっかそっか〜」と口角を上げる。


「な、何…?」

「いやぁ、別に?マフィン(それ)、七瀬くんにあげないの?」

「…あぁ、うん。渡そうと思ったけど、やめることにしたの」

「…ふーん、なんで?」

「七瀬くん、バナナ苦手なんだって」

「…へ〜、オレならたとえ嫌いな物でも好きな子からくれる物なら普通に嬉しいけどな〜」


…そういうものなのかな。

私なら好きな人にあげる物なら大好物なの作ってあげたいけど。

そう考えながらしょんぼりしている私を見て、中条くんはじーっとマフィンを見つめる。


「遠坂さん、それあげないならオレが貰っていい?」

「えっ…あぁ…うん、どうぞ」

「わーい、ありがと〜!ちょうどお腹空いてたんだよね〜」


幼い子どものように喜ぶ中条くんは、私が作ったマフィンを片手にズカズカと違うクラスの教室へと入って行く。


「ねえ、見て七瀬くん。遠坂さんにマフィン貰ったんだ〜。いいでしょ?」


七瀬くんの元へやって来た中条くんは笑顔でマフィンを彼に見せびらかす。

一方、私は中条くんの言動に顎が外れそうなくらいあんぐりと口が開いた。