「マジ?あんた七瀬くん狙ってんの?勇者だね〜」

「だってかっこいいじゃん、七瀬くん」

「かっこいいけど、女子をこっぴどく振るような男だよ?あたしは絶対無理〜」

「可能性がゼロでも、想いを伝えないまま終わるのは嫌だし、わたしは玉砕覚悟で行くよ!」


そして、丁度良いタイミングで授業終了を告げるチャイムが鳴る。


「チャイム鳴った!マフィン七瀬くんに渡してくる!!」

「精一杯想い伝えてきなよ。骨は拾うから!」

「ありがと〜!!」


チャイムが鳴り終えたと同時におそらく七瀬くんのファンであろう、女の子は、マフィンが入ったラッピング袋を片手に家庭科室を飛び出して行く。


「汐莉、あの子行っちゃったよ。あんたは渡しに行かなくていいの?」

「えっと……」

「七瀬くん、胃袋鷲掴みにされて今出て行った子と付き合うかもしんないよ?」

「そ、それはだめ!!!」


七瀬くんが女の子に胃をもぎ取られる場面を想像してしまい、サーッと血の気が引く感覚がした。

慌てて七瀬くんのクラスへやって来ると先程飛び出して行った女の子と七瀬くんが会話している所を目撃する。


「七瀬くん、これさっきの授業で作ったの!よかったら食べて!」


頬を紅潮させながら勇気を振り絞ってマフィンを七瀬くんに差し出した。