「…よくわかんないけど、汐莉だって恋する乙女でしょ?」
「え?あぁ…そうなのかな…?」
「『そうなのかな』って……汐莉、自分で気づいてないかもだけど、あんた入学当初の頃よりすっごい垢抜けてるし、美人になってるよ?」
「うえっ…!?ほ、本当!?」
「ほんとほんと。七瀬くんに恋してる汐莉、めちゃくちゃかわいいよ」
「絢ちゃん…」
「諦めずに努力を積み重ねて、自分の目標のために頑張る女の子ってすっごい綺麗だし、他人が思ってるより何倍もかっこよくて、1番輝いてるなってウチは思うんだ。───だからさ、もっと自信持ちな?」
絢ちゃんは柔らかく笑って、そっと私の頭を撫でてくれる。
「恋に悩む汐莉、最高にかわいい!」
「あ、絢ぢゃん…!!」
可愛くて優しい絢ちゃんに褒められ、涙腺が緩みそうになっていた時───…。
「ねえ、マフィン誰にあげる〜?」
他クラスの女子たちの会話が耳に入ってきた。
「あたしはね〜、絶賛片想い中の相手にあげるんだ〜。そっちは?」
「わたしは七瀬くん♡」
…ん?
"七瀬くん"という名前が聞こえて、ぐりんっと女子たちの方へ視線を移す。