「汐莉、これはチャンスだよ?」
「へっ…?チャンス?」
「そう!だって、基本女子と話さないあの七瀬くんが自分の方からあんたと関わろうとしてるんだよ!?汐莉の気持ちに答えられないとか言っておきながら友達になりたいだなんてさ。…これってつまり、脈あり説出てんじゃん?」
い、いやいやいやいや…!!
「そんなわけない!!あと絢ちゃん声大きいよ!本人が目の前にいるのに…!」
慌ててそう言うと絢ちゃんは「七瀬くん見てみなよ」と顎で視線を促す。
「遠く見ながらぼーっとしてるから大丈夫だよ。たぶんウチらの会話何にも聞いてないと思う。…というか、めちゃくちゃ眠たそう」
絢ちゃんの言う通り、七瀬くんはぼんやりとした表情でどこか遠くを眺めている。
「ただ立ってるだけなのに絵になってるよ。すごいね、七瀬くんって」
「七瀬くん、自分の容姿の良さに自覚してないからなあ…」
七瀬くんの綺麗な横顔を拝んでいると、絢ちゃんのスマホから着信音が鳴り出す。
「あ、ほっしー(彼氏のあだ名)から電話だ。もっしもーし!」
絢ちゃんが電話に出たため、邪魔にならないよう気を遣ってその場から離れる。
「あ、あの、七瀬くん」
つんっと人差し指で肩をつつくと七瀬くんはハッと我に返ったかのように目を見開いた。