「初めての彼女は無理だったけど、初めてのキスはいただきました!!」

「…俺が奪ったんだけどね」


七瀬くんにキスされたのは最近のことなのに、今では半年くらい前であるかのように懐かしく感じてしまう。



「…あと、俺の初恋は遠坂さんだから」



そう言って、メロンパンの最後の一口をごくんっと飲み込んだ。

どう言った感情なのかはわからないが、よくもまあ、恥ずかしいことを言えるなぁ…と、心の中で感心する。


「…なんか、面と向かって言うの恥ずかしいね」

「…えっ」


は、恥ずかしいって……。


「表情は何も変わってないんですけど、それは照れてるんですか?」


七瀬くんは真顔で「うん」と頷いた。

…あんまり照れているような素振りじゃないんだよなぁ。


「…何、じろじろ見ないでよ」

「…い、いや、全く表情変わってないなと思いまして……」

「離れないと口ふさぐよ」


七瀬くんの警告を無視して更にまじまじと観察する。


「…七瀬くん、やっぱり表情筋が───」


そう言いかけた所で、七瀬くんは少し首を傾けてそっと私の唇に自分の唇を重ねる。


「ほら、だから言ったのに」


私から離れた七瀬くんはフンッと、息をつき、そっぽを向いてしまう。