…あれ、なんか、当たり前のようにあーんしてしまったけど…。
よく考えたらこれ、間接キスでは!?
先程のやりとりを思い出していると、七瀬くんは意地悪な笑みを浮かべて。
「間接キスだね」
「……しっかりうがいしてくださいね」
「…あー、うん」
次第に体温が熱くなってきて、俯いていると、七瀬くんはそっと顔を覗き込んでくる。
「顔、真っ赤。かわいいね」
「〜〜っ!!?」
ほんっとにこの男は…!!
私を揶揄ったりして面白がるんだよなぁ…!!
「…"恋すると世界が変わる"って何かで聞いたことがあるんだけど、本当にその通りだね」
雲一つない空を見上げて、七瀬くんは呟くようにそう言った。
「いつも下ばかり見ていたから空がこんなにも綺麗だとは思わなかった」
七瀬くんと同じように私も空を見上げる。
「……七瀬くんの初めての彼女になれなかったのは少し残念です」
「それは…その、ごめん…」
「…ふふっ、大丈夫です。七瀬くんは優しいから傷つけないようにと思って付き合ったんですよね」
「そう…なのかな。でも、結局傷つけたから俺は優しくなんかないよ」
伏し目がちで答える七瀬くんの方へ視線を移すが、目は合わない。
彼の長い睫毛が目元に影を落としている。