「七瀬くん!お待たせしました!」


階段を駆け上がり、勢いよく屋上の扉を開けると、ぼんやりと空を眺めていた七瀬くんがこちらに振り返る。


「俺も今来たとこ」


今日もいつも通り彼は無表情。


「…七瀬くん、お昼ごはんパンだけですか?」


そう聞くと七瀬くんは、メロンパンを頬張りながらこくんっと頷く。


「両親、共働きであんまり家にいないから、お昼は適当に買って食べてる」

「そうなんですか…。あ、よかった私のお弁当のおかずあげましょうか?」

「いいよ、遠坂さんのごはんなくなる」

「でも、七瀬くん午後の授業でお腹すきますよ?」

「……じゃあトマトください」

「あ、えっ、トマトだけでいいんですか?」


慎重にお箸でトマトを掴み、もう片方の手はお皿代わりにして、七瀬くんの口元へと持っていく。


「…そこは手で食べさせてくれるんじゃないの」

「手にはたくさんのバイ菌がついてるのでだめです」

「…ソーデスカ」


七瀬くんは感情のこもっていない返事をした後、パクリ、とトマトを一口で食べた。