そう言うと七瀬くんは可笑しそうに笑って、
「例えだよ」
優しい瞳で見つめてくるものだから、思わず胸がきゅ〜って、苦しくなる。
「…あのさ、せっかくだしキスでもしとく?」
「え、いきなりなんですか。『1杯飲みに行く?』みたいな言い方して…」
「なんか、無性に遠坂さんとキスがしたいと思いました」
七瀬くんの大きな手が私の両頬を包み込む。
「…い、以前しましたよね?」
「うん。でも、付き合ってからのチューは初めてだよね」
「チューッ!?いいい、いや、確かにそうなんですけど───」
「遠坂さん、1回黙ろっか」
「え、黙るって…あの、七瀬く───」
『七瀬くん』と言いかけたところで私の唇は七瀬くんの唇によって塞がれた。
目の前には七瀬くんの綺麗な顔が視界いっぱいに広がっている。
そっと唇を離した七瀬くんは愛しそうに微笑んで。
「好きだよ」
それだけ言ってもう一度、私の唇にキスを落とした。