七瀬くんはぽかんとしながら私を見る。
そして数秒程沈黙が続き、やっと口を開いた。
「…遠坂さんもヤキモチ妬くんだね」
「人間なんだから当たり前じゃないですか…!」
「…ふはっ、そうだね。きみも人間だよね」
私の反応を見て、フッと笑みをこぼす七瀬くん。
くっくっくと、声を押し殺して笑いを堪える七瀬くんにムッとする。
「はーっ、おもしろ。…ねえ、遠坂さん」
「……なんですか」
「ハグしていい?」
「はぐ…。……ん?ハグ?hug!?急に何を言い出すんですか!?」
「したくなったから」
「ななな何を言って───」
返事をする間もなく腕を引っ張られ、ふわりと七瀬くんの匂いに包まれた。
現在、私たちの距離は0センチ。
お互い密着している状態だ。
背中には七瀬くんの腕が回されていて、離れたくても離れられない。
「あの、七瀬く───」
「…やっぱり、遠坂さんは落ち着くね」
ぽそりと呟く七瀬くんに「えっ?」と声を出す。
「俺ね、中2の頃、彼女いたんだ」
「…あ、そ…へー……」
七瀬くん、彼女いたんだ。
ふーん、そっかそっか…。
でもまあ七瀬くんかっこいいから彼女の1人や2人いて当然か。
…どうしよう、昔の彼女にまで嫉妬しちゃってる。