恐る恐る腕を上げ、きゅっと彼の袖を握る。
七瀬くんは不思議そうに「どうしたの?」と言った表情をする。
「……に……ってください」
「……え?」
聞き返された瞬間、勢いよく顔を上げる。
「…っ、私だけのものになってください!!!」
目を見開いた七瀬くんの瞳に真っ赤な顔をした自分の姿が映り込む。
「遠坂さん、どうし───」
「七瀬くんが好きです!大好きです!!好きすぎてもう、おかしくなりそう……」
話している途中で声が震えていくのがわかる。
「さっき、七瀬くんが告白の呼び出しされてるって聞いた時、もしかしたら七瀬くんが誰かの彼氏になるんじゃないかって思うと、居ても立っても居られなくなって…。そう考えただけで胸が痛くなって、気がついたら七瀬くんを探し回ってました……」
「…遠坂さん」
「…はい、なんで───うぶっ…!!!」
名前を呼ばれ、返事をすると突然、七瀬くんは片手で私の両頬を挟むように掴む。
ブニュッと潰された間抜け顔を見下ろして。
「…きみ、馬鹿なの?」
いつもと少し声のトーンが低くなった気がして、「ふえっ…?」と彼を見る。
「遠坂さん、俺はきみの馬鹿さにとても驚いています」
「んなっ…!?じ、自分が馬鹿であることはもう自覚しています!!」
七瀬くんに掴まれている手を振り払い、キッと睨みつける。