「別に、遠坂さんを貶した女子の言うことが全て正しいとは限らないしね。"女性は見た目が全て"なんて言っていたけど、あれは彼女の価値観にすぎないし、自分の考えを相手に押し付けた所で相手の心に響くかどうかであり、俺は見た目だけじゃなくて、その相手自身の性格や人間性をしっかりと見てあげることが大切なんじゃないかなって(以下省略)」

「な、なるほど…?」


何を言っているのかいまいちよくわからなかったが、とりあえず頷いておく。


「でも、私、岡田さんにどうこう言われて七瀬くんと向き合うことに躊躇ってるわけじゃないんです」

「…そーなの?」

「はい。これは私の覚悟と勇気の問題なので」

「ふーん」



『遠坂さんは遠坂さんのまま、そのままでいいんだよ』



ふと、七瀬くんの言葉を思い出す。

私は決意とともに、七瀬くんに気持ちを伝える。

もう一度、"好き"って伝えるんだ。


「…まあ、俺は遠坂さんの意見を優先するから何も言わないよ。───でも…」

「で、でも…?」


黒い瞳に私の怯えた顔が映り込む。

そしてじーっと私の目を見つめて、


「俺は遠坂さんのものだから、逃げないでね」


近い距離でそう言われ、ぶわっと全身に熱が集まっていく。

獲物を狙うような目から逸らすことができず、私はただ、硬直するだけだった。