『七瀬くん、恋したことないんですか!?』
ふと、遠坂さんの言葉を思い出す。
目を見開いて俺を見ている彼女にこう聞いたことがある。
『恋ってさ、だるいの?』
まだ、恋を知らなかった俺は疑問を抱く。
『好きな人ができるとどんな感じなの?』
───心を掻き乱されるような感覚だよ。
『好きな人の前だと心臓がうるさいっていうけどそれ本当なの?』
───本当だよ。相手に伝わってしまうんじゃないかって思うくらい、うるさくて、苦しいよ。
昇降口に到着したものの、遠坂さんの姿は見当たらなかった。
…もしかして、手ぶらのまま帰ったのか。
でも定期がないと電車乗れないしな…
キョロキョロ辺りを見回しながら遠坂さんを探していると───…
「七瀬くんも七瀬くんだよね。何の努力もしていない女子を選ぶなんてどうかしてるわ」
…ん?
自分の名前を呼ばれた気がして、声のする方へと廊下を辿っていく。
そしてそっと顔を覗かせると、遠坂さんともう1人の女子が向かい合って何か喋っている。
タイミングを見計らっていると、2人の会話がどんどん言い合いになってきて。