中条に何かされたわけでもないのに彼を睨んでしまったり、
「遠坂さんのモノは俺のモノだから」
なんて、子どもっぽいこと言って遠坂さんを困らせた。
「好きです、唯人くん」
目を閉じ、机に伏せながら遠坂さんに対する気持ちを考えていた時、突然耳元で可愛らしいことを言ってきて───。
この瞬間、一瞬でストンッと何かが落ちた音がして。
両手でそっと彼女の頬を包み込み、キスをした。
「…っ、七瀬くん!!」
押しのけられた時は俺にキスをされて拒まれたのかとショックを受けたが、後悔はしていない。
俺はもう、完全に自覚したから。
遠坂さんが好きなんだって───…。
そして、次の日の遠坂さんの反応は予想通りで。
「お、おひゃっ…おはよう、ごぜーやすっ!!」
「そ、それでは、私…先行きますので!」
目を泳がせながら一緒に登校していたのであろう、中条を置いて立ち去って行ってしまった。