表情がコロコロ変わる所が見ていて飽きない。

彼女をそんな風にしか思っていなかったんだ。

───なのに…。



「…ひ、引きましたか?」



1年生の時、俺に意識してもらうために背中まであった長い髪をばっさりと切って、今も短い髪型を維持していると暴露する遠坂さん。

その後、よく熟れたトマトみたいに頬を紅潮させながら聞いてきて、心臓をぎゅっと握られたような感覚がした。


この時にはもう、自分の気持ちに気づくべきだった。


でも、誰かを好きになったことなんてなかったから頭が追いつかなかった。

今更後悔しても遅い話なのに……。



「今のでちょっとキュンときた」

「…冗談やめてもらっていいですか」



スンッ…と、真顔で返された。


それからというもの、学校に着くと、今日は彼女に会えるかな…とか、なんて声をかけよう…とか。

クラスも違うのに、そわそわし始めて心が落ち着かなくて。


そしてたまたま、遠くの方で彼女を見つけただけで嬉しくなって、無意識に目で追ったりして。

だけど、楽しい感情とは裏腹に、遠坂さんと同じクラスの中条が2人仲良さそうに一緒にいる所を目撃した辺りから今までになかった感情が芽生え始めたのだ。