ーーー
ーー


『おれさ〜、七瀬が本気で恋してるとこ見てみたいんだよな〜』


7限目の体育の授業終わり。

更衣室から教室へと戻っている途中で友人が突如、意味のわからない発言をする。


『急に何』

『いや、だってさ〜、好きでもない女子と付き合ってたとか"恋"とは言わねえじゃん?そんなのおまえ、ほぼ恋愛初心者も同然ってゆーかさ〜』

『逆に聞くけど、恋ってする必要ある?』

『まあそうなんだけど〜。女の子って柔らかくて気持ちいいじゃん?』

『……きも』


どいつもこいつも。

なんでみんな性欲しか湧かないのだろう。

ヤッたとか、ヤッてないとかで盛り上がって。

馬鹿馬鹿しい。


『俺はおまえらがいるだけで十分だよ』

『えっ…やだ、いきなり嬉しいこと言わないで。そうゆう台詞はイケメンにしか許されないんだからね!』

『…何、その喋り方』


ドッと笑いが湧き上がっている中、ふと視線を違う方向へ移すと、壁にもたれかかりながらうずくまっている女の子が目に入った。

背中を丸めてお腹を抱えているような体勢。

誰も気づいていないのか…と、周りを見渡しても人の気配がない。

心の中で小さくため息をつき、しゃがみ込んでいる女子生徒の方へ近づく。