中学2年生の頃、初めてできた彼女にそう聞いた。
彼女と言っても、両想いではなかった。
女の子の方から何度もしつこく告白してきたものだから折れて仕方なく付き合っただけ。
ただ、それだけ。
俺は幼い頃から物事に興味を示さなかった。
昔から勉強も運動も人並みにできるし、何でもそつなくこなすタイプの人間だったため、趣味も特技もない。
何の取り柄もない人間に、どうして当時の彼女はこんな俺を好きになってくれたのか。
そう疑問を抱いた俺は、無意識に彼女に問いかけていた。
すると彼女は『かっこいいから』と一言発した。
『何がかっこいいの?』
『全部』
『……意味わかんない』
どこをどうかっこいいのか、詳しく教えてもらえなかったが、面倒くさくなった俺は、これ以上何も聞かなかった。
───だが、ある日のこと。
女子生徒たちが喋っている会話が聞こえた。
『あんた最近SNSのフォロワー増えてきてない?』
『マジ?まあ、それもこれも七瀬くんと付き合ってるおかげなんだよね〜』
だるそうに掃除をしながら駄弁っている数人の女子が集まっている。
その輪の中には、彼女も混じっている。