見たところ妖精は居ないようでしたが、呼びかけてみることにしました。

「桜さん、妖精さん、いませんか?」
『……だぁれ?』

 弱弱しい声が聞こえたと思うと、桜の木に小さな妖精が現れました。まだ小さな女の子の風貌で、淡いピンク色のワンピースを着ています。だけど少し元気がありません。

「こんにちは。妖精さん、ローズ・アークライトと申します。」
『ろ?』
「ローズですわ。妖精さん、突然ですが、貴女の木がとっても弱っていますよね。元気になるようにお手伝いしたいのです。」
『わぁ、ありがとう!枝が切られて痛くって、元気がなくなっていたの。たぶんおいしい土があれば、少しずつ元気になれると思うんだけど。』
「では、私の魔法で土に栄養を足してもよろしいですか?」

 お爺様のほうを見ると、小さく頷きました。許可してくださったのだと判断し、土に魔法をかけます。花魔法は土属性の魔法。土の形を変えることや地面を揺るがす攻撃魔法などは全く使えませんが、こうして花に関係することであれば、土にも変化を与えることが出来ます。つくづく花関係にしか役に立たない私です。

『あーおいしい。』
「切ってしまった枝の切り口も、保護魔法をかけさせていただいてもいいですか?」
『うん!痛いところが剥き出しで、病気になってると思うの』
「分かりました。では病気が治るように元気になる魔法もかけますね。」

 そう言って切り口に向かい、優しく魔法を展開しました。これで病気も治るはず。

『ありがとう!今年はお花がたくさん咲かせられるように頑張るね』
「はい!私もお手伝いしますね!」

 少しだけ元気になった妖精さんは、また姿を消しました。私はお爺様に向き直り、「今年はお花をたくさん咲かせたいとおっしゃってました。」とご報告しました。

「…助かった。礼を言うぞ、アークライトのお嬢様。」
「いいえ、お役に立てなのならよかったです。あの…」
「ジェームズで構わん。庭は好きにいじってよい。」
「まぁ!ジェームズ様、ありがとうございます!うふふふっ!嬉しい!アンナ!聞きましたか?お許しをいただいたわ!」

 突然の私の興奮状態に、アンナもジェームズ様も驚き顔です。でもこの素晴らしい庭園を私もお世話できるだなんて、うれしくて飛び上がりそうだったのです!