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イルカショーを見たあと、どうしても気になったのか日名瀬さんがハンカチを出して拭いてくれる。
…っ、近い!
「…っ、ほっとけば乾くから気にしないで!」
思わず大きな声で拒否してしまった。
日名瀬さんの、少しショックそうな表情が見えた。
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「そんなところで遠慮しなくたって……」
あ、そっか。
僕といるのが誰かに見られるのが嫌だけど、日名瀬さん優しいから、嘘ついてるんだ。
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絶対、そんなはずないって思ってた。
だから僕を選んだんだって。
——でも。
「——あの、待って。
今日、…というか、近藤くんに、その…デート、誘った理由…。本当は、最初に言うつもりだったんだ。
罰ゲームが、《好きな人と1日デートする。口実など全て自由。※ただし、いない場合は相手を自由に決めて良し。》っていう…やつで」
…うん?
話が全く読めないんだけど?
「チョコレートは、本当は、あげるつもりなかったの。…作るだけのつもりで。それで」
「…待って」
日名瀬さんは俯きながら頑張って話していて。
それを遮りたくなくて、黙って聞いていたけど。
「……えっと、つまり、どういうこと?」
日名瀬さんが、俯いていた顔を上げる。
——その顔は、真っ赤で。
「…えっ」
「ごめん…。こ、近藤くんは、優しさで、今日1日付き合ってくれたんだと思うけど、私は……」
…私は?
「——こ、近藤くんが、好きです」
……っ。
嬉しい、というよりは。
なんで? って気持ちの方が大きくて。
それでもやっぱり、そんな表情を見ると、嬉しくて。
「…これ」
僕はトイレと称して買ってきた、ペンギンのぬいぐるみを渡す。
「…これ、ペンギンの」
覚えててくれたの? なんて目で見てくる日名瀬さん。…さすがに、今日言われたことくらい覚えてるよ。