【side日奈瀬】
「わあっ、すごいね! ペンギンがご飯食べてるところ見れるなんて! 可愛い!」

 …可愛い。

「…ペンギン、好きなの?」

「…大好きなの」

 ……そっか。じゃあ、覚えておこう。

「ごめんね、私ばっかりはしゃいじゃって」

「いいよ。それに、つまんなそうにしてるより楽しそうにしてくれてた方が、こっちとしても嬉しいし」

 「それに——」と、口を開く。
 好きな物を、そういうふうに言ってもらえるなんて嬉しいし。知りたいし。



 ——好きな子のことなんだから。

「なんでもないや」

 でもこれは、言っちゃいけない。

 だって僕は彼氏じゃない。いくらデート中だからといって、彼氏面はしちゃいけないんだ。

 *

「ええ、私は半分ずつ被るんだと…」

 …半分ずつ被る!?

「だって、それは日名瀬さん嫌でしょ? このデートだって……」

 ——ただの、罰ゲームで。

 そう、罰ゲームなんだから。

 心の中で呟いて、勝手に1人でショックを受ける。

 そうだ、罰ゲーム。

 ——夢みたいな時間には、終わりが来るんだ。



「そっか。デートだったね」

「……ほら、忘れてるぐらいじゃんか」

 忘れるくらいなんだ。忘れるくらい、どうでもいいことなのか。
 そう思っていたら、「忘れちゃうね。なんだか、楽しくて」と日名瀬さんに笑いかけられて、ドキッとすると同時に、嬉しく思う。

「…っ、そうだね」

 僕は驚く。