それどころか、私は周りの視線にも気づかなかった。

「…私、今日本当に楽しかった。ただ、あんまり甘えちゃうと、今日一日だけなのに悪い気もするし……」

「そんなところで遠慮しなくたって……」

 何か言いかけて、口をつぐむ近藤くん。

「…今日は僕も楽しかった。水族館の半券、思い出として取っておいてもいいかな?」

「そんなこと、わざわざ聞かなくてもいいのに」

「ありがとう」

 ありがとうなんて、本当はこっちのセリフ。私の罰ゲームなんかに、わざわざ付き合ってくれてありがとう。

 その言葉の代わりに、私はチョコを渡す時に言いたかったことを言おうと決心する。